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[タンポポ調査近況]根底を覆すDNA解析結果

九大タンポポ調査事務局の満行知花です。

みなさま、タンポポ調査、お疲れ様でした。

2015年福岡調査では、おかげさまで昨年とは桁違いのサンプル数となりました。

前回更新後、オオズタンポポ(?)やケンサキタンポポ(?)など、これまでは採集されてこなかった

タンポポが数多く送られ、九大事務局では嬉しい悲鳴をあげています。

現在、同定、入力作業が追いつかず、Mapの更新も9日のままで止まっておりますが、ご了承ください。

さて、前回の記事でDNA抽出したタンポポの解析結果が出ました。

そこで衝撃的な事実が分かったので、それも含めてご報告したいと思います。

6/9更新分までで、福岡県では、

外来種:セイヨウタンポポ、アカミタンポポ、外来種(タネが無いため不明)、在来型外来種(=ニセカントウ。在来種と外来種との雑種)

在来種:シロバナタンポポ、カンサイタンポポ、モウコタンポポ、ツクシタンポポ、キビシロタンポポ

のサンプルが届いていました。

今回は、在来タンポポの形をした外来種(正確には雑種)が多かったこともあり、形態だけで区別しているとどんどん不安になってきました。

そこで、同定に不安があるものは、花茎の一部をもらって、DNAの解析をしています。

まずは、外来種と在来種とを区別する遺伝子の解析です。

遺伝子だけでニホンタンポポ、外来タンポポ、雑種を判別する時、多くの場合、ITSという遺伝子が使われます。

(ニホンタンポポは、カンサイタンポポやトウカイタンポポなどの2倍体在来種を指しています。)

このような図(電気泳動図)を見た事があるでしょうか?

4月に中学高校にタンポポ調査の説明に行った時に、最近はこの図の見方を学校で教わると知って驚きました。

上の図で、縦がそれぞれの個体を表しています。

そして両種の遺伝配列の違いから、ニホンタンポポは上の方に、外来タンポポは下の方に線が見えます。

雑種はどちらもの遺伝子を持っているので、両方で線が見えます。

そして、今回の解析結果がこちらです↓

上の番号が、Mapでの整理番号の4015に続く数字です。その下の種名は、形態での同定結果です。

この解析結果を見て、目を疑いました。

◆モウコタンポポorツクシタンポポは、セイヨウタンポポと同じ遺伝子型だった

実験をする前、モウコタンポポやツクシタンポポは、もちろんニホンタンポポと同じタイプの遺伝子だろうと考えていました。

しかし、形態でモウコタンポポ、ツクシタンポポと同定されたものは、全て、セイヨウタンポポの遺伝子と同じパターンを示しています。

普通、ITSは2倍体在来種の識別に使っており、在来倍数体について解析した事がなかったために盲点でした。

モウコタンポポがセイヨウタンポポ型ということは、大陸の多くのタンポポはセイヨウ型で、日本の2倍体種が特別な遺伝子型を持っている、ということなのでしょうか。

ちなみに、カンサイタンポポは2倍体在来種なので、189番や384番のカンサイは間違いなくニホンタンポポの遺伝子型になっています。

◆やはり、在来型外来種に騙されていた。

外来種か在来種かで迷ったものは、やはりいくつか間違っていましたね。

152番では、在来種と見せかけて実は雑種でしたし、逆に在来型外来種に騙されないぞ!という

意識が強すぎたためか、162番、207番、186番では本物の在来種を在来型外来種にしてしまっています。

未熟な私には、反り返りが3のモウコタンポポと雑種を見分けるのは、困難でした。

しかし、改めて見返してみると、確かに納得です。

また、本物の在来種か在来型外来種か分からなかった4個体のうち3つは雑種でした。

◆「シロバナタンポポは雑種起源」を裏付ける結果?

もうひとつ、驚きの結果が、シロバナタンポポ(orキビシロタンポポ)です。

(205番のキビシロは、キビシロという確信を持てないために解析に回したので、242番のシロバナと同じ可能性があります。)

今回の結果を見ると、シロバナタンポポは、ニホンタンポポ特有の遺伝子と、セイヨウタンポポの遺伝子の両方を持っています。

明らかに、雑種の遺伝子のパターンです。

タンポポ研究の第一人者、新潟大学の森田先生は、タンパク質の解析(アイソザイム)で、シロバナタンポポは、朝鮮半島由来のケイリンシロタンポポとカンサイタンポポとの雑種の可能性が高い、という結果を出されています。

今回の結果は、それを裏付ける結果に思えます。

先ほどのモウコタンポポの結果から、これまで「セイヨウタンポポの遺伝子」と呼んでいたものは、実際は大陸の様々なタンポポの持っている遺伝子である可能性があります。

大陸から入ってきたケイリンシロタンポポがセイヨウ型の遺伝子を持っていて、カンサイタンポポと交雑したと考えれば辻褄が合います。

同定の確認のために行ったDNA解析でしたが、思わぬ色々な発見があり、面白かったです。

このような事は、どなかた既に調べているでしょうか?

ご存知の方がいらっしゃれば、情報をいただけるとうれしいです。


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